プラスチックの性質を知る(なるほど!ぷらすちっく)
2つの透明なフィルムをどうやって見分ける?
ここに、2つの透明なフィルムがあります。
ひとつはPETフィルム、もうひとつはPPフィルムですが、どちらも透明で、見た目だけでは区別がつきません。どうすれば区別できるのでしょうか?
昔は、火を付けて燃やしてみて「白い煙が出たほうがPP」なんてことも言われていましたが、今は赤外線を用いた赤外分光分析という方法があります。
赤外線で見分けます
ここでは、赤外分光分析について少し説明します。
まず、透明なフィルムに赤外線を照射します。赤外線は熱線ですから、単純にニクロム線に電流を通すことによって発生させることができます。
分析器では抵抗体に電流を流し熱線を出しますが、温度コントロールを高精度で行い安定的に赤外線を発生させています。
透明なフィルムに100%の赤外線を照射すると、フィルムは透明であっても透過する赤外線は、数%から数十%、フィルムに吸収されるのです。
この透過した赤外線の率を透過率といいます。
また、同じ光源から発生した赤外線は、実はいろいろな波長の赤外線が混ざり合ったもので、それぞれの波長によって透過率が変わってきます。
(反対に吸収された率を計算で算出したものを吸光度といいます)
赤外線で見分けます
横軸に赤外線の波長(波数)をとり、縦軸にその波長の透過率をグラフに描くと、波形が描けます。
この波形はスペクトルと言って、その物質(今回はフィルム)に特有の波形なのです。
現在、このプラスチックのスペクトルは、データベース化されており、データベースと比較することにより、物質名が特定できます。
今回の場合でいえば、あらかじめPETとPPということはわかっているので、どちらかひとつのスペクトルを測定すれば、区別は可能ということになります。
(このような場合、普通は両方を測定し特定します)
プラスチックが何度(℃)で融けるか調べるには?
熱可塑性樹脂の最大の特徴は、加熱すると柔らかくなり冷やすと元の硬い状態に戻るという点です。
では、何℃で柔らかくなるのか?調べるにはどうすればいいのでしょうか?
これを知る方法として、熱分析という分析手法が研究されてきました。このうち代表的な方法を紹介します。
TMA(熱機械的分析)
TMAはサーマルメカニカルアナリシスの略で、加熱あるいは冷却過程での機械的な寸法変化を分析する方法です。
サンプルに加重をかけ、温度条件による寸法変化を測定していくのですが、荷重のかけ方により、3つの測定方法があります。
- 引っ張り法
- 板状あるいはフィルム状のサンプルに引っ張り荷重をかける方法
- 圧縮法
- 先端が平らな石英プローブでサンプルに圧縮荷重をかける方法
- ペネトレーション法(針入法)
- 先端が針のように尖った石英プローブでサンプルに圧縮荷重をかける方法
DSC(示差走査熱量分析)
DSCはディファレンシャルスキャンニングカロリーメーターの略です。
サンプルを入れるセルという2つの入れ物に、一方にサンプルを入れ、もう一方を空にして同じ温度環境におき、別々にセルの温度を測定し2者の温度差をうめるためにどのくらいの電気量が必要だったのかを分析する方法です。
たとえば、サンプルが熱可塑性樹脂の場合、融け始めてから融け終るまでの過程を測定し横軸に時間を、縦軸に電気量を描いていくと、反応の過程で緩やかな三角形が描けます。この三角形の面積を計算すると、熱量がわかります。 このように反応熱量を分析できたり、反応開始温度を測定したりすることができます。
ガラス転移点
耳なれない言葉ですが、プラスチックをミクロの目で見ると、分子が密に集まって結晶になった部分と、祖になった部分の両方が存在します。結晶部分は硬く、祖の部分は柔らかくなっており、プラスチックの柔軟性は、この祖の部分の働きが大きいわけです。
プラスチックは、加熱により分子運動が活発になりますが、加熱によりこの結晶部分が壊れていくのが融解です。
また、祖の部分も加熱により動きやすくなります。この動きやすくなる温度のことをガラス転移温度Tgといいます。
ガラス転移温度と融解する温度がわかれば、物質名を特定することができます。。
- 加熱前
- ガラス転移点(ガラス転移温度)
- 融解(融点)
過去の熱履歴で変化するガラス転移温度
熱可塑性樹脂のポリエチレンテレフタレートを融解状態から急冷することによりガラス転移を容易に検出できるようになります。いろいろな急冷速度で冷却し、その後、15℃/minの昇温速度で加熱した場合、冷却速度が遅くなるにつれて、吸熱ピークは非常に大きくなるという例があります。
また、熱硬化性樹脂エポキシ樹脂を35mgをDSC装置内で220℃一定温度で保持し硬化させた後、15℃/minの昇温速度で加熱した場合、ガラス転移が検出できます。
保持時間を10分から500分まで変えた場合のガラス転移は高温側に移行していきます。
このように、プラスチックへの冷却条件や加熱条件といった熱履歴がかわることでDSCで検出されるガラス転移のピーク形状が変化したり、ガラス転移温度が変化したりします。
加工に使用するプラスチックについて、いろいろな条件で事前に加工のシュミレーションを行いデータを蓄積、研究することで工程条件の管理や品質管理に役立ちます。
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